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世界経済と分断2023. 4.20

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻から1年強が過ぎました。西側諸国による対ロシア経済制裁はコロナ禍による悪影響からの回復途上にあった世界経済に再び打撃を与えました。特にエネルギー・食料価格が大幅に上昇し、インフレを加速させて米欧の金融引き締めを急がせました。その結果、米ドルなどの外貨で資金調達を図るアジア新興国の政府や企業はFRBの利上げで利払い負担が増大し、経済成長にブレーキがかかり、デフォルト(債務不履行)に至る国や企業が出ました。

このウクライナ戦争とインフレ対策が経済活動を抑制している問題に加えて、米中間の大国間競争が世界経済の分断を加速させている深刻な問題が懸念されます。

当初トランプ政権時の貿易戦争から現在は貿易・経済と安全保障が融合していますので技術を巡る覇権争い、そして台湾海峡をめぐる対立にまで問題は拡大しており、今後米中対立が一層深刻化したり、中国のロシアへの軍事、経済的連携が更に深まりますと対ロシア同様に経済、金融制裁を中国に科すことが予想されます。

しかし世界経済に占める中国の重要性はロシアとは比較にならないほど大きく、対中制裁は日米欧だけでなく世界経済の発展に致命的な影響を与えることは必至です。本年23年は欧米の経済成長が大きく減速しますが、現在世界経済の原動力を担う国は中国しか見当たらず、これは08年の米国で発生したリーマン・ショック時に中国は大規模な財政出動で世界経済の回復を主導した前例を見ても間違いないと考えます。

深刻な分断や経済制裁に至る前に、輸出管理などの施策が必要と判断される場合には、対象分野を安全保障に直結する最先端のハイテク分野に絞り経済全般に広がらないように20カ国・地域(G20)などの多国間協議の場を通じてルール作りに主導的役割を果たすべき立場にあるのが日本です。対中国との継続的な対話や協議は中国による台湾海峡をめぐる軍事的リスクも軽減できると確信します。米中大国間競争が貿易、金融、投資、人的流れ(観光・学術・商用)まで決定的な分断に発展せぬように、23年5月に開催されるG7広島サミットで議長国である日本が手腕を発揮することを祈っております。

2023年4月20日
エフシー商事株式会社
代表取締役 谷口聖二

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